―総員玉砕せよ!


総員玉砕せよ! (講談社文庫)

総員玉砕せよ! (講談社文庫)




参考URL インパール作戦




僕の父方の祖父が、戦争中、80%戦死したというインパール作戦に従軍していて、奇跡的に生還した。


と、いうわけで映画や漫画で繰り返し描かれるやつ、



「木村ァ〜貴様が死んだら貴様の田んぼはどうなるんだぁ〜」とか



「お父様、お母様、先立つ不孝をお許しください。自分はお国のために・・」という



カビの生えたようなドラマティックな戦争、よりも、



実もふたもない、ありのままの戦場、を知りたい、という欲求を中学生のころよりずーと持っている。





それは、特攻隊の情報より、戦場での「事務」「出世競争」とかの情報だ。


具体的にいうと、手榴弾で魚取ったり、


飯あげ、飯つけなどの日常の実務、であったり、


毎日の「使役」(塹壕掘ったり、陣地構築したり、つー工事現場のようなタスク)の情報である。





それを、従軍経験があり、幸運にも生還した戦記モノ、妖怪モノ漫画の巨匠、水木しげるが、自分のいた大隊の運命をリアルに書いた漫画、がこれだ。




確かに人はたくさん死ぬが、ガンダムみたいに特攻したり、華々しく死んでいくわけでない。


ある人は材木運んでいてこけてデング熱で死ぬ。


ある人は手榴弾漁の最中、魚をのどに詰まらせて死ぬ。


ある人は、ボートで川を渡っていて、落とした帽子を拾おうとして、川に落ちてわにに食われる。


そういう描写だけでなく、玉砕で生き残った兵士を、師団の士気を高めるため、秘密裏にもう一度玉砕させる。





あほらしさ。




そのような命令を出す参謀本部も、会社の課長級のような普通の人間。玉砕さなかには逃げようとする。


そうした、しょうもなさ、しょうもない戦争、システムに翻弄されて死ぬ兵士を。



水木氏特有のぼやーっとした、ふやーとした軽妙なかんじで描いている。





60年前の、戦争とは、こういうもんか、と普通に納得させられる。





ガンダム(大好きだけど)のようなある意味華々しい戦場感にだまされたくなければよんだほうがいい。