―イラク戦争の合理性

イラク戦争で誰にメリットがあるのか考えている。



国際政治で「正当性」も大切だが、人権がこれだけクローズアップされてくると、戦争は人間の生存権を侵害しているという理屈が通るので、戦争には正当性がないとも言えるだろう。


一方で国際政治で重要なことは「合理性」である。どの政府も国益の最大化を狙って国際政治に望んでいるようだ。


そこで、合理性を把握するためには国際政治の舞台で行われた「政策」のメリットデメリットを考えることが重要になる。なお、「戦争行為」は国際法で制御された、外交上の「政策」のひとつである。



そこでイラク戦争で誰にメリットがあったのか。戦前、アメリカの安定された石油供給を目的にされているといわれていた。主な根拠は主戦派に石油産業の関係者が多かったことと、イラクには石油資源が豊富であること、などがあげられるだろう。



しかし、現時点で、アメリカにメリットがあったとは思えない。石油価格は高騰している。これはイラク戦争の主目的であるといわれるアメリカの安定的な石油供給に反している。また、イラクの石油産業の復興は遅れている。しかし、一方で、莫大な戦費をイラク戦争で費やしている。ここで考えると、イラク戦争を行った結果、アメリカに期待されたメリットは、ほとんどない。



イラク戦争は間違いなく、失敗であった。だが、こうした議論が日本のメディアでいわれることはあまりない。日本政府が自衛隊を派兵してどのようなメリットを期待したのか、また、それがどの程度達成されていて、どの程度達成されていないか。達成されていないのであるならば、今後何を狙うか。こうした冷静な議論はほとんど現れない。