―新潟中部地震

先日、新潟で地震があったそうだ。



阪神大震災のごとき直下型地震で、新潟中東部に被害が集中した。新幹線がはじめて脱線した。今朝の報道では、ある村のライフライン、情報がすべて遮断され、徒歩と自衛隊のヘリコプタで村民全員が退去したようだ。


村民が全員退去、というのはありうる話だ。ここで二つ思った。第一に南海大地震で、高知に被害が多かった場合、最悪県内全域がこうなるかもしれないということ。そして第二に、ジャージにジャンパーを着てタオルを巻きスポーツバッグに家財道具一式をもって非難している被災者が、田舎の単線の線路を渡っている情景にリアリズムを感じたことである。


第一点目について。高知県は県外と、四国山脈で隔離されている。四国山脈は峻険であるから、交通が少ない。カーブが多い対面国道が2本、同じような2車線の高速道路、飛行場、港、である。最悪、国道と高速が使えないこともありうる。津波の危険性が高いので、港も危ない。つまり、最悪県内全域が、隔離される可能性があるということだ。


こうなった場合、県民80万、高知市民35万に、どのような対策を採るのだろうか。まさかヘリコプターでピストン輸送ということもできまい。そうならずとも、交通が不便な山間部の集落はかなりたくさんある。高知県は日本でもっとも居住可能面積が少ない県である。言い換えると、それだけ山、川が多く、交通が不便な県ということである。新潟の村が隔離されたことは他人事ではない。



第二点目。この光景をニュースで見た。リアルだった。ありえない話だが、日本国に戦争行為が仕掛けられた場合、このような光景がありうるだろう。また、その光景はあくまでリアル、実もふたもないものだろう。高圧電線の張り巡らされた郊外の衛星都市の上空を戦闘機が飛行しても、その下には悪趣味なパチンコ屋の看板は見えるし、大方の景色は変わらない、という点をリアルに感じてしまった。


その辺のリアリズムを戦争映画や漫画で表現したものは少ない。戦後の米軍のカラーフィルムで、千葉の農村に進駐している米軍を日本陸軍が護衛しているシーンなどがその例外であるが、これは事実である。創作物では、「七人の侍」ぐらいしかないと思う。ほとんどの作品が、「戦争の悲観による美化」がやられている。これが詰まらん。沈黙の艦隊での台詞「戦争の悲観は戦争の美化につながる」にかわぐちかいじの識見を感じざるをえない。