―041026〜美芸論レポート


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美術史学の基礎
http://cgfa.sunsite.dk/fineart.htm
美術史が好き!:絵画を読み解く楽しみ その2
用件

レポート課題:以下の2題  参考文献はこちら

1. ヴェルフリン『美術史の基礎概念』におけるルネサンス様式からバロック様式への展開を説明する五つの対概念
  (1) 線的 ー 絵画的
  (2) 平面 ー 奥行き
  (3) 閉ざされた形式 ー 開かれた形式
  (4) 多数性 ー 統一性
  (5) 明瞭性 ー 不明瞭性

  に適応する2×5=計10作品を探し、次の5項目ごとにまとめる。
   a. 作者名(通名可、できればどのような人物か調べて説明する)
   b. 作品名(通名可)
   c. 制作年
   d. 図版のあるネット上のURL
   e. 作品の視覚形式についての記述(=対概念があてはまる様式的特徴を説明)

 ※ルネサンスの作品は15〜16世紀イタリアから、バロックの作品は17世紀のイタリア、ネーデルラント、フランドル、スペインから選ぶこと。絵画、彫刻、建築のいずれでも可。作者は全て異なることが好ましい。
 ※対概念の例として提示した作品以外であれば、授業中に紹介した作品を取りあげてもよい。
 ※どうしてもネット上に目当ての画像が見つからない場合は、本やCD-ROMからの図版をフリーのレンタルサーバーなどに自分でアップロードしてそのURLをリンクさせること。
 ※図版のURLがメールに正しくリンクできているかどうか、まず自分にメールを送信して確認後、提出すること。

2. 課題1で挙げた10作品のうち3点を選んで、ストラーテン『イコノグラフィー入門』におけるイコノグラフィーの3段階
  (1)第1段階 前イコノグラフィー的記述
  (2)第2段階 イコノグラフィー的記述 
  (3)第3段階 イコノグラフィー的解釈

  からそれぞれの作品の意味内容を説明する。もし可能であれば次の段階を加えてもよい。
  (4)第4段階 イコノロジー的解釈 

提出期限:経営学部、経済学部は11月14日23:59、
     法学部・政策科学部、産業社会学部は11月21日23:59
提出方法:電子メール→ yumikim@mcn.ne.jp
     「件名/Subject」に「中間レポート」と記入
     「本文」の冒頭に学部、学年、氏名、学籍番号
受理確認:順次、「件名:レポート受信済み」のメールを返信します。
     ただし、レポート内容に不備のあるもの、すなわち採点不可能なものには返信しません。

     優秀なレポートは当サイトで公開します。基本的には匿名ですが、希望者は氏名も公開。




本文


■1:
  1. ヴェルフリン『美術史の基礎概念』におけるルネサンス様式からバロック様式への展開を説明する五つの対概念 について



▼(1) 線的 ー 絵画的


 ●イ:線的


a.Bronzino
b.Portrait of a Young Girl with a Prayer Book
c.不明
d.http://cgfa.sunsite.dk/bronzino/p-bronzino16.htm
e.


当作品では、明確な輪郭線によって衣装の模様が描かれている。この特徴は、
ヴェルフリンの言う対概念のうちの、線的な特徴と言える。



 ●ロ:絵画的


a. Velazquez
b. Prince Balthasar Carlos with a Dwarf
c. 1654
d. http://cgfa.sunsite.dk/velazque/p-velazq44.htm
e.


当作品は、ブロンズィーノの作品に対して、筆のタッチによって、布の質感の
表現が目指されており、輪郭線は明解でないから、「絵画的」なバロックの特
徴といえる。




 ▼(2) 平面 ー 奥行き


  ●イ:平面


a. Verrocchio
b. Tobias and the Angel
c. 1470-80
d. http://cgfa.sunsite.dk/v/p-follver1.htm
e.


当作品では、二人の人物が画面に並行するよう平面的に配置されている。


  ●ロ:奥行き


a. Duck, Jacob
b. Sleeping Woman
c. 1650s
d. http://cgfa.sunsite.dk/d/p-duck3.htm
e.


当作品では、三人の人物の配置が平面的でなく奥行きが出ている。画面の奥に
向かうよう配置されている。





 ▼(3) 閉ざされた形式 ー 開かれた形式


  ●イ:閉ざされた形式


a. Esiguo, Maestro
b. The Nativity
c. 1400s
d. http://cgfa.sunsite.dk/e/p-esiguo1.htm
e.


当作品では、水平線と垂直線の直角交差を基本とする単純な画面構成を採用し
ている。これは枠組みを反復強化する狙いがある。このような形式を閉ざされ
た形式―閉形式―という。


  ●ロ:開かれた形式


a. Escalante, Juan Antonio
b. An Angel Awakens the Prophet Elijah
c. 1667
d. http://cgfa.sunsite.dk/e/p-escalan1.htm
e.


前述のマエストロの作品に対して、当作品では、対角線を基本とする構成を
とっている。これは、画面の四角形の中で、枠組みを逸脱し画面の外の空間へ
と展開していく形式、すなわち開かれた形式である。といえる。




 ▼(4) 多数性 ー 統一性


  ●イ:多数性


a. Leonardo da Vinci
b. aint Jerome
c. 1480
d. http://art.pro.tok2.com/D/daVinci/leon10.jpg
e.


当作品の男性は、身体の各部分がそれぞれに独立して部分ごとに鑑賞が可能で
ある。全体の統一された流れは考慮されていない。中央付近の男性の体の流れ
は中央付近にとどまっている。これはヴェルフリンのいう多数性の特徴に合致
する。



 ●ロ:統一性


a. Preti, Mattia
b. Saint Sebastian
c. 1660
d. http://cgfa.sunsite.dk/p/p-preti3.htm
e.


当作品の男性は、身体の各部分も鑑賞可能であるが、全体的に流れを考えられ
ている。右手から左足にかけてのS字カーブなどである。このような特徴は
ヴェルフリンのいう統一性のあるものに合致する。



 ▼(5) 明瞭性 ー 不明瞭性


  ●イ:明瞭性


a. Tiziano
b. Dana醇R
c. 1553-54
d. http://cgfa.sunsite.dk/titian/p-titian29.htm
e.


当作品では、手前の裸体の女性に光線を当てているが、一方で、背景の男
性と現象も位ながらもはっきりと描いている。このように全体的にはっきり明
瞭に書く様式をとっているといえよう。


  ●ロ:不明瞭性


a. Rembrandt
b. Dana醇R
c. 1636
d. http://cgfa.sunsite.dk/rembrand/p-rembran8.htm
e.


当作品は、tizianoのダナエに比べると、中央の女性に強烈な光線を与えて
いる。一方、女性以外の部分はとても暗く描かれていて、不明瞭である。この
ように部分的な明瞭性を犠牲として、かえって全体的にドラマティックな演出
とすることで、メッセージ性を高めている。


 ▼まとめ


美術作品は一点一点が個性的である。


しかし、作家ごと、地域ごと、時代ごとに観察することで、
それらの作品に共通する「様式」を見出すことができる。


ヴェルフリンはこれらに着目し、5つの対概念からルネサン
ス期からバロック期にいたる芸術作品の様式の変遷を記述し
た。彼の学説には多くの批判もあったが、切り口に明確な言
葉を与えることによって、漠然と捕らえていたものの「見方
」の違いをはっきりさせ、それぞれの時代の持つ特色を明確
にしている。





■2

ストラーテン『イコノグラフィー入門』におけるイコノグラフィーの3段階について


 ▼A
a. Velazquez
b. Prince Balthasar Carlos with a Dwarf
c. 1654
d. http://cgfa.sunsite.dk/velazque/p-velazq44.htm

  ●前イコノグラフィー的記述
赤い幕の前にたつ二人の少年。左の少年(小人である)は右手に杖、左手にりんごを持つ。
中央に立つ少年は赤いたすきをつけ、杖を持ち、直立している。
前景右側には羽帽子とクッションがある。

  ●イコノグラフィー的記述
左側の小人と、中央はバルタサール・カルロス王子(1629-1646)の肖像画である。バルタサール王子はカルロス4世の長男である。カルロス4世は優れた芸術家を宮廷画家として抱えた。ベラスケスもその一人である。また、カルロス4世は長子を愛し、数々の肖像画をベラスケスに描かせている。


  ●イコノグラフィー的解釈
カルロス王子は中央で胸をはり、王権を示す杖を持ち直立している。このことから、将来の国王である、ということを象徴している。と考えられる。


 ▼B
a. Rembrandt
b. Danae
c. 1636
d. http://cgfa.sunsite.dk/rembrand/p-rembran8.htm


  ●前イコノグラフィー的記述
暗い寝室。中央にいる全裸の女性。右後部には、男性が幕から入ろうとしている。左後部には金色の羽の生えた幼児が見える。

  ●イコノグラフィー的記述
ダナエの懐妊と、それに気づく父王を描いている。
中央の女性はダナエである。ダナエとはギリシア神話中の女性である。彼女はペロポネソス半島アルゴスという国の美しい王女だ。父王はダナエが生んだ孫に殺される、という予言を信じて、ダナエを閉じ込める。が、しかし、ダナエは美しいので好色な神ゼウスに見つかる。ゼウスは金色の雫に化身し、ダナエと交わる。そこでダナエは子供を授かり、悩んだ王に箱舟に閉じ込められて海に流された。画題と女性が一人しかいないため、中央の女性がダナエであるといえる。
背景の男性は父王である。なぜならば、
第一に、箱舟に乗せられたあとならば、息子(ペルセウス)がいるはずであるが、この部屋の中はダナエ一人であるからだ。

  ●イコノグラフィー的解釈
この絵画はダナエの懐妊を象徴している。理由は右後部の金色のクピドが懐妊を象徴していると考えられるためである。クピドはギリシア神話中の愛を象徴する神である。ルネサンス以降、よく翼の生えた少年として表現され、日本では天使と混同される場合もある。繰り返すが、クピドは愛の神である。そのクピドが金色である、ということは、ゼウス神が金色のしずくに化身してダナエと交わった、という伝承とも合致する。したがって、このクピドはダナエの懐妊を象徴している、といえる。
以上をもって、当絵画でのダナエは、懐妊して、父王が気づく、場面であると結論する。




 ▼C
a. Preti, Mattia
b. Saint Sebastian
c. 1660
d. http://cgfa.sunsite.dk/p/p-preti3.htm

  ●前イコノグラフィー的記述
暗い背景の中、中央にいる男性が背景のいすに両手両足を縛り付けられている。彼の手には矢が刺さっている。

  ●イコノグラフィー的記述
聖セバスチャンとはガリア出身のローマの軍人である。
当時のローマ帝国ではキリスト教は国禁であった。しかし隠れてキリスト教を信仰していた彼は、近衛隊隊長の身でありながら、迫害されているキリスト教徒を秘密裏に援助していた。
ところがある日、彼は密告され、信仰が公になり、セバスチャンは処刑される。杭に縛り付けられた彼に、無数の矢が放たれたが、処刑人の矢は彼の命を奪うことができず、セバスチャンは復活して皇帝の行いを非難した。しかし、結局最期は棍棒で撲殺され死亡する。その後、彼は聖人に列せられる。


  ●イコノグラフィー的解釈
セバスチャンにはたくさんの矢が刺さりながらも、血を流していない。また彼は空を力なく見上げている。以上二点の理由により、彼は自分に奇跡が起こっているのは主のために自分は生きている、ということを今、気づく、瞬間であるといえる。気づいた瞬間に主に感謝をできるわけではない。信じられない出来事の意味に気づかなければ、人間行動に移せないものである。

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