―T岡君
中学校は卓球部と生徒会と塾と落書きをやっていた。生徒会の面子は今思えば最高の面子だった。今中古バイクの輸出業を行っているN瀬、大阪産業大学で環境工学を学んでいるM沢、高校でテニスをはじめ四国大会に出たT橋など楽しい面子だった。しかし、後輩にはいわゆるヲタクが多く、別の意味で濃い面子だった。
ヲタクの代表格が、T岡だった。彼には伝説がたくさんある。
第一に、自称ハッカーだった。繰り返すが、ハッカーである。僕は信じてしまった。当時僕は選択技術の授業でパソコンのキーボードを触ったぐらいで、この道具に神秘性を感じていた時代である。何を言われても簡単に信じた。
「津田君、アメリカ国防総省にいっちゃろうか?」
T岡君はそういってハッキングした。
僕は興奮してしまった。NHKのドキュメンタリーの世界が目の前に広がっているのである。初めて合服が汗ばみ、ディスプレイに見入っていた。
そのハッキングは、掲示板に文字を書き込む、という作業だった。
そして得意そうにハッキングについて語った。
・・・・。
次の話だ。T岡とその一段は、突然霊能者になった。
突然、T岡が、空に向かって力みはじめた。
苦しそうにしている。何か調子がわるいのか?と聞くと、
僕の方の上にいる霊を退治しているとのことだ。
わが中学校は戦争後すぐに建造された、古い建物だった。生徒会室はその一番偏狭にあり、半分物置とかしている。T岡曰く、そうした空間に霊気や次元のハザマが生じやすいという。
次元のハザマ・・・。
彼の守護霊は「オリオンさま」らしい。ポスターカラーを五角形に並べなにやらいっている。
僕たちは、とりあえず置いておいて、仕事を進めることにしたが、霊の仕業か、何も進まない。
つづく